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備忘録やノートの代わりとして

レヴュースタァライト第6話の感想・前半

瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ

現代語訳:川の流れが速く、岩にせき止められた流れが2つに分かれても最後は1つになるように、今は愛しいあの人と別れていても、いつかまた再会しようと思っている

 

レヴュースタァライト第6話、色んな意味で刺さった。感想を書くと長くなりそうなので、先に考察を書く。舞台版のネタバレも含まれているので、見ていない人は注意。

 

考察

今回の再演、どうしちゃったのかなぁ。初めてのことばっかり。やっぱり、台本通りじゃなくっちゃね。

何と言っても今回の謎は、大場ななの立場。

レヴューでもないのに舞台にいて、意味深な独り言を呟く。レヴューに参加している描写が無いにも関わらず、彼女の順位は3位。加えて、3話での真矢の台詞「舞台の上にスタァは一人。求めて、飢え、渇き、奪い合う」の中で、「奪い合う」に対応していたのは顔が映っていない大場ななだった。

黒幕、あるいは地下劇場でのオーディションの関係者と考えられても仕方ない。

後述するが、協力者という可能性はあるだろう。しかしながら、黒幕・関係者説を唱えるには疑問が残る(関係者=元々関わっていた人物と定義)。それは、彼女が地下劇場のオーディションに対して貢献できることは何かということである。

彼女は戯曲スタァライトの脚本担当に立候補したが、結局は自分の希望通りには出来ていない。脚本・演出担当の二人が関係者で、彼女がその後継なら説明はつくかもしれないが、今のところ、そう考える材料は無い。加えて、スタァライトと地下のオーディションが別である事は今回ではっきりした。舞台でも、各学校持ち回りで開かれているものであることが示唆されていたし、毎年演じるスタァライトとは関係ないことは明らかであろう。それなのに、一人の生徒でしかない彼女は、地下のオーディションに対して何の貢献が出来るのだろうか。

そもそも、黒幕・関係者であるなら、舞台での設定・脚本と非常に乖離してしまう。もはやパラレルワールドの物語になる。ネットで少なからず見受けられる「ばなな=キリン説」も言うに及ばず、やはり、その可能性は無いと言えるだろう。

私は、黒幕や関係者ではなく、彼女はただオーディションに参加していないだけなのではないかと思う。キリンはその理由を知っていて、容認している。最後の「大場なな」という文字が白から黒に変わるのは、彼女の心変わりと表舞台への登場を示唆しているのではないだろうか。

そう考える理由は、彼女の行動原理にある。

 

去年、私たち8人が演じた舞台が、崩れるのかもしれないのよ?私は去年の『スタァライト』を忘れたくない!

私は過去に決別なんてしない。戦い抜いて、また『スタァライト』を

舞台において、ばななは、過去に8人で演じたスタァライトに対して尋常でない執着を見せている。オーバーチュアにおいては、ばななが過去に孤独であったことが示唆されている。
彼女にとってスタァライトとは、あの8人で演じたスタァライトただ一つなのである。そしてそれは、「孤独との離別」という意味も持っていた。故にばななは、去年のスタァライトに固執しているのである。
彼女がメインキャストに参加しないスタァライトはもちろんながら、過去に孤独だったばななにとって、8人の誰かが孤独なことも堪えられない事なのだろう。これは、オーバーチュアで、一人ぼっちになっていた園児の世話をする純那を見たことでクラス委員長の座を譲っていることから推測できる。

以上のことから、彼女の行動原理は「再び孤独にならないこと」であり、それは即ち「8人で演じた去年のスタァライトを今年も演じる」ということであると考えられる。もしかすると、彼女が頻繁に8人それぞれの様子を写真に撮っているのも、記憶という曖昧で変わりやすいものではなく、変化しない写真というもので過去の様子を残したいからなのかもしれない。

さて、この行動原理を基に考えると、脚本に回ったばななの意図は明快である。

それは、転校してきたひかりをメインキャストに入れず、かつ、自分をメインキャストに加えることで、去年のスタァライトを再現することである。
脚本に回れば自分をキャストに選べないのではないかと思われるが、脚本担当でありながら自分をメインキャストに加えることが可能であるのは、今回の選抜一覧にばななが載っていたことからも明らかであろう(そもそも、ばななはクラス上位なので当たり前ではあるが)。

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彼女が持っていたスタァライトの台本は、去年のスタァライトの台本であることに気づいただろうか。
やっぱり、台本通りじゃなくっちゃね。」というのは、「去年のスタァライトと同じじゃなくっちゃね」というのと同義なのではないだろうか。

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次回はばなな回である。個人的には、ばななの過去・行動の意図が明らかになる回なのではないかと思う。彼女の抱える闇を説明するには、1話では足りないのではないだろうか。となると、彼女のレヴュー参加は8話あたりかもしれない。

 

華恋が言ってただろ、舞台少女は日々進化していくって。だから、天堂やクロは主役を張ってるのに努力を止めないんだ。みんなも、もっときらめく自分になるために・・・!

この時、ばななの姿は無い。この理由は2つ考えられる。1つ目は、単にばななが地下のオーディションに参加していない(あるいは、参加していると認識されていない)からである。2つ目は、ばななが「進化を求めていない」からである。考えてみると、トップスタァの座という最も目指すべき、進化の先にあるものを得るためにオーディションに参加するのだから、1つ目の理由は2つ目のそれに帰結する。故に、ばななは「進化を求めていない」と考えられる。
進化は変化を伴う、変化はこの場合、過去との決別とも捉えることが出来るだろう。これは、先に述べたばななの行動原理からも明らかである。彼女は進化を求めていないのだ。

しかし、ばななが進化を拒み、過去の再現に奔走しているのに対し、他の7人は全員、進化を求め、あるいは伴う変化を受け入れてしまったのである。真矢・クロは常に進化を求めている。他の5人はそれぞれ進化、変化した。最も周囲(といっても華恋のみ)の変化を受け入れようとしなかったまひるも、変化を受け入れることで自ら進化した。皮肉なことに、変化を生じさせない、孤独になるまいとするばななの意思に反し、周囲は変化してしまったのだ。
その点で、既に大場ななは"孤独"なのである。

 

さて、ばなながオーディションに参加している描写が無いにも関わらず、順位表には載っており、地下劇場の舞台にも居られるのは何故かについて考えたい。可能性としては3つ考えられる。

1つ目は、描写が無いだけで既にレヴューに参加している可能性である。

2つ目は、ばななが地下劇場でのオーディションの協力者である可能性である。
この場合、もしかするとキリンの介入手段として取って置かれているのかもしれない。舞台においては、9人が舞台監督である走駝主任の指示に反抗し、刺客であるコロス達を倒すことで全員が輝く道を選択するという終わり方だった。つまり、彼女達がオーディションの主であるキリンが求めていない行動に出る可能性がある。キリンは、過去に異常な程の執着を見せ、かつ最上位クラスの実力者であるばななに対し、何らかの見返りを約束することで、自分の指示通りに動くように取引した。こう考えると、確かに9人の中で、トップスタァの座以外を見返りにしても取引を成立させられる可能性が高いのは、ばななである。

3つ目は、ばななが地下劇場でのオーディションの参加を保留している可能性である。
2話で純那とキリンが会話している描写があったこと、香子が双葉のオーディション参加を知らなかったことから、参加者にはキリンが直接、一対一でオーディションの開催目的と報酬の説明があったこと、そして、参加後も話す機会があることが推察できる。その際に、ばななが地下劇場のオーディションに参加する気がない旨を伝え、キリンがそれを容認した上で保留としたのではないだろうか。
ばななの行動原理は先に述べた通りだが、舞台において、華恋の「みんなで輝きたい」という気持ちに対し真っ先に賛同したのはばななである。

私は、みんなと舞台を作りたいの!・・・華恋ちゃんの言う通り、皆と輝きたい!

彼女もまた、「みんなで輝きたい」と思っている。過去への執着も踏まえると、その気持ちは非常に強いものと考えられる。
一方で、キリンが主催するオーディションは、少なくともその開催意図として、誰か一人だけが輝くものである事が示唆されている。これは「みんなで輝きたい」という気持ちとは相反する。加えて、ばなながトップスタァの座を目指していないのだとすれば、やはり参加する理由は無い。ちなみに、同じ思いを抱く華恋がオーディションに参加し続けているのは、華恋が「誰か一人とは限定していない」と解釈していることと、オーディションについてよく知らないことが関係していると思われる。
しかしながら、この場合、6話の最後のシーンが上手く説明できないのも事実である。メタ的に考えれば、キリンの協力者という可能性も低く、あのシーンが視聴者へのミスリードを狙うものであると思われるが、これはあまり作中の描写に基づいたものではない。だが、私はこの可能性を推したいと思う。希望を込めて。

 

いずれにしても、キーワードとなってくるのは「奪う」という言葉である。

トップスタァを目指して、歌って、踊って、奪い合いましょう

奪うとか、簡単に言わないで

舞台の上にスタァは一人。求めて、飢え、渇き、奪い合う

舞台では、一対一のレヴューで勝った者が相手のきらめきを奪うとされていた。アニメにおいてもやはり、「奪う」という言葉は非常に大きな重みを持つようである。そして、作中でその言葉に対応していたのが、先述した通り、ばななである。
「みんなで輝きたい」と思うばななが心変わりし、トップスタァの座を得るため、舞台と同様に、本気でぶつかる事が相手への敬意だと考えるようになれば、遠慮は一切しないだろう。
あるいはもしかすると、8人のスタァライトを、8人のコミュニティを守るためには、地下劇場のオーディションでひかりから煌めきを奪うしかないのだと考えて、オーディションに参加するようになるのかもしれない。

 

以上が、6話を踏まえた考察である。7話が楽しみで仕方がない。この作品は、少なくとも「みんなで仲良く、切磋琢磨しながら同じ目標に向かって競い合う」という考えが根本にあると私は思っている。だからこそ、最後は9人が同じ方向を見て、9人で一緒にトップスタァを目指すようになると信じている。
後半では、とりとめが無くなりそうだが、6話の感想を書きたいと思う。

最後に

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