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備忘録やノートの代わりとして

経済政策の話

争点になりやすい経済政策について自分が思うところをここで書きたいと思います。本当はサークルの会報誌の記事にでもしようかなと思ったのですが、そういう事書いてもなーと思って書きませんでした。Twitterで書いても、「なんだこいつ・・・」って思われそうですし。こう思われるのが嫌で、あんまり真面目な話(?)はTwitterでしないようにしてるんですよね。

 

さて、ここで述べることは以下の通り

  1. 日本経済の現状
  2. 税について
  3. 金融政策について

ここでまず、経済における「名目値」と「実質値」について説明する。経済学部生は理解していて当たり前のことだが、「名目値」とは集計あるいは推計したそのままの値であり、「実質値」とは名目値から物価変動の影響を除いた値である。簡単な例を以下に示す。

昨年の所得が3万円であり、この年のCDの価格が1枚1000円だったとする。この時、CDは30枚購入することができる。

今年になり所得が6万円になったとする。この場合、所得は名目値で200%増加したことになる。一方で、物価も200%上昇し、CDの価格が1枚2000円になったとすると、購入できるCDの枚数は30枚で昨年と変わりない。

ここで所得の実質値を計算してみる。物価変動の影響を取り除く方法として、昨年のCDの価格を今年の所得で買えるCDの枚数で計算してみると、1000×30=30000となり、実質値の所得は3万円となる。

このように、名目値で所得が上昇していても、物価も同率で上昇していれば得られる財・サービスの量には変化がない。このように物価変動の影響を取り除くことで、実際の変化をより正確にみることができる。

 

1.日本経済の現状

ここでは代表的なものとして、GDP完全失業率、業況判断指数、景気動向指数、物価指数の動きを見る。

 1.GDP

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内閣府のウェブサイトより国民経済計算のデータを取り、2003年から2016年にかけての実質・名目GDP成長率のグラフを作成した。

まず、世界金融危機が起こっていた2008~2009年は大きくマイナスになっている。翌2010年にはプラス転換しているが、2011年に発生した東日本大震災の影響により、大きく落ち込んでいる。その後は2014年の消費税増税によって実質GDPが落ち込んだものの、翌年からは上昇している。

なお、2010年の実質成長率が3%を超えているが、世界金融危機による大きな落ち込みの反動と、物価が下落傾向にあったことが相まって、このような成長率になっていることに留意したい。

グラフからは、世界金融危機以降、GDP成長率は以前の水準に戻りつつあることが読み取れる。

 2.完全失業率

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完全失業率は、2008年に大きく上昇したのち、2010年からは継続して下降している。2017年8月の完全失業率(季節調整値)は2.8%であり、下降トレンドは継続しているようである。日銀が行っている全国企業短期経済観測調査における雇用人員判断DI(全産業)を見ると、大企業から中小企業まで、全ての企業においてマイナスとなっている。

ここで労働力人口の推移を見ると、2006年から2016年にかけて、およそ6600万人前後で推移している一方、年齢別の労働力人口を見ると、65歳以上が増加傾向にあるのに対し、15~24歳は減少傾向にある。15~24歳の労働力人口比率は上昇しており、そもそもこの年齢層の人口自体が減少していると考えるのが妥当である。これは、少子高齢化の進行からも明らかなことである。

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以上のことから、日本経済における労働供給不足が完全失業率の低下をもたらしていると考えるのが妥当である。

 3.業況判断指数

日銀の時系列統計データ検索サイトで2006年から2016年までの業況判断指数のグラフを作成した。

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青(実線)が大企業製造業、赤(実線)が大企業非製造業、緑(点線)が中小企業製造業、オレンジ(点線)が中小企業非製造業である。

2013年以降、大きく上昇しており、中小企業製造業以外はプラスの値をとっている。2013年からの金融政策によって円安・株高になったことを考えると、これらの政策の影響によるものと考えるのが妥当ではないかと考えるが、一方で同時期には米国経済が回復しており、一概に政策効果とは言い難い。

 4.物価指数

以下に、「平成28年(2016年)平均消費者物価指数の動向」に掲載されている消費者物価指数のグラフを示す。

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2014年の大きな上昇は消費税増税の影響によるものである。そこで、日銀による消費税調整済みのグラフを以下に示す。

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現行の金融政策においては「2%の物価上昇」を目標に掲げていたが、物価上昇率は1%以下であり、現時点で達成されているとは言えない。賃金と物価は同時に動くことが多いことを考えると、賃金があまり上昇しないという感覚は正しいように思われる。ただし、実質賃金が下がっている件については、先に述べた労働力人口の変化を考慮する必要がある。なぜなら、労働供給不足に直面しているために、女性(主婦層)や高齢者の雇用者数が増えているが、このような人々はアルバイト・パートといった最低賃金近くの賃金で働く人が多い。したがって、実質賃金を押し下げる要因になる。

一方で、労働供給不足に直面しているのになぜ賃金が上がらないのかという疑問もある。これは日本に限らず、アメリカも直面している問題で、失業率がかなり低い水準であるのに賃金上昇率が上がらない現状がある。これについては現在進行形で研究が進められているが、個人的には労働市場が硬直的(日本の場合は転職市場が未整備)であるために、賃金が上昇する機会である転職が進まず、失業率が低い水準であるにも関わらず、賃金が上昇しないのではないかと考える。

 

以上、日本経済の現状について簡単に述べた。より詳細な分析が望ましいが、それはいずれ気が向いたら行いたいと思う。

次は税について述べる。特にも「所得税法人税増税」と「消費税の増税」について考えたい。